謎その1 日本の死亡率が低いのはなぜか(調査目的)
謎その2 最近、致死率が上昇しているのはなぜか(治療目的)
この2つの謎は、PCR検査の2つの使用目的に密接に関連しています。
〇 日本は、武漢ウィルスが日本に上陸して以降、PCR検査を、主に治療目的よりも疫学調査目的(感染経路調査)に使用してきました。
一方、緊急事態宣言により、新規感染者数の増加が落ち着くとともに、治療目的のPCR検査が増えてきました。
〇 このPCR検査の使い方を見ると、日本の死亡率の低さおよび最近の致死率の上昇が説明できます。
詳しく見ていきます。
感染症対策の基本は、検査による早期発見、隔離、治療なのですが、
日本は検査体制が未整備、すなわちPCR検査件数が限定されることから、
政府の感染症対策本部は、発生したクラスター(感染集団)に対し、PCR検査を使った疫学調査により感染経路を特定し、クラスターを潰す、という「クラスター潰し」戦術のためにPCR検査を優先的に使用してきました。
〇 PCR検査が疫学調査に優先的に使用された結果、かかりつけ医が保健所に連絡しても、PCR検査を受けられないという状況が生まれました。
ところで、
そのクラスター潰し戦術の対象となったのは、接待を伴う飲食店、ライブハウス、スポーツジムなどです。そこは主に若年者が集まる場所であり、PCR検査は、若年者を対象に、疫学調査目的で実施されました。
感染を拡大するのは、活動の活発な若年者と考えられており、若年者はコロナの伝播者として、政府クラスター対策班にとってマークの対象なのです。
〇 下記の表をご覧ください。
厚労省が発表した年齢階級別陽性者数死亡者数(5月6日現在)なのですが、
陽性者数(人) 占率(%) 死亡者数(人) 致死率(%)
10代未満 253 1.7 0 0.0
10代 356 2.3 0 0.0
20代 2446 16.0 0 0.0
30代 2257 14.8 2 0.1
40代 2431 15.9 8 0.3
50代 2546 16.6 16 0.6
60代 1736 11.3 42 2.4
70代 1490 9.7 100 6.7
80代以上 1513 9.9 219 14.5
調査中他 272 1.8 0
合計 15300 100.0 387 2.5
残念ながら、年齢別の検査件数のデータは公開されていないのですが、
コロナによる死亡は70代以上が全体の80%を占めているにもかかわらず、PCR検査は致死率の低い20-50代を中心に行われていることがわかります。
すなわち、PCR検査は、致死率の高い高齢者ではなく、致死率の低い若年を中心に行われてきたのです。
〇
〇 高齢者の死因の第3位は肺炎であり、高齢者が肺炎で死亡することは珍しくもありません。これまで、PCR検査を受けることもなく、多くの高齢者が死亡したと思います。
〇 検査・医療体制の整備されたドイツの人口10万人当たりの検査件数は4292件、死亡者数は10.0人に対し、日本は検査件数が214件、死者数が0.6人なのですが、
日本の死亡率の低さは、PCR検査件数の少なさ、及び、検査対象が、致死率の低い若年者に偏ったことが理由です。
〇 一方、致死率は、4月15日1.5%、5月1日3%、5月15日4.4%、5月26日5.1%と上昇傾向にあります。
〇 緊急事態宣言により、営業停止となった、接待を伴う飲食店、ライブハウス、スポーツジムなどのクラスターは減り、今やクラスターの中心は、医療機関や高齢者施設です。
すなわち、以前は、致死率が低い若年者を中心にPCR検査を行っていたため、致死率が低く出ていたのですが、
最近は、致死率の高い高齢者や基礎疾患を持つ人に対するPCR検査が増えてきたのが、最近、致死率が上昇してきた理由です。
〇 日本のPCR検査は、そもそも検査件数が少ない上に、検査目的が、疫学調査目的と治療目的が混在しており、その結果は不安定であり、残念ながら死亡統計は信頼性がおけません。
〇 厚労省も5月9日以降、年齢階級別陽性者数・死亡者数の公表をやめました。