〇 3月1日付毎日新聞記事「岐阜の病院クラスター 全病棟に拡大、225人に 原因究明急ぐ」によれば、
「前略」
厚労省のクラスター対策班によると、医療機関で2人以上の感染が確認されたケースは全国で延べ903件(2月22日現在)。
そのうち200人を超えたクラスターは10件程度あった。
感染拡大が広がった共通の要因に「初動の遅れ」があるという。スタッフや入院患者が自身の感染に気付かないまま病室や病棟を移動し、持病があるなど抵抗力が落ちている人に次々と感染が広がった事例もある。
コロナに感染しても無症状であったり、コロナ以外の疾患で発熱していたりすることがあるため、コロナの感染を素早く見つけることが困難な場合も多い。マスクの着用や消毒などの基本的な対策を徹底し、患者のわずかな体調変化を医療スタッフ間でしっかり引き継ぐことが、感染予防には欠かせない。
昨年2月に医師と入院患者計5人の感染が判明し、国内初の病院クラスターとされた済生会有田病院(和歌山県湯浅町・184床)では、医療従事者の手指を介して感染が広がった可能性が高いことが和歌山県の調査で分かった。
戸田中央総合病院(埼玉県戸田市・517床)では、昨年11月から2月24日までにスタッフと患者計324人の陽性が判明。感染者数は国内最大規模となった。対策班と埼玉県の調査によると、認知症でマスクを常に着用できない患者がいたほか、その患者の担当スタッフの陽性も判明するなどしていた。休憩室や更衣室でスタッフがマスクを外して会話していたことも、感染拡大の一因となったという。(中略)
◇これまで確認された主な病院クラスター
病院名 |
所在地 |
病床数 |
感染者数 |
感染拡大の経緯や原因 |
収束 |
床 |
人 |
||||
済生会有田病院 |
和歌山 |
184 |
5 |
スタッフの手指から患者に感染 |
済 |
永寿総合病院 |
東京 |
400 |
235 |
蜜となる部屋での対策の不徹底 |
済 |
旭川厚生病院 |
北海道 |
499 |
311 |
無症状の入院患者から拡大 |
済 |
埼玉 |
517 |
324 |
職員や患者のマスク着用不徹底 |
||
木沢記念病院 |
岐阜 |
452 |
225 |
調査中 |
|
※自治体や病院への取材による。木沢記念病院の感染者数は家族も含む |
〇 コロナは、無自覚無症状の段階で人にうつしますので、感染した職員・患者が気付かないままに病室や病棟を移動し、院内に感染を拡大している可能性があります。
また、最初に確認された感染者が感染源で、そこから院内に感染が拡大しているとは限りません。
以上より、院内のどこに無症状の感染者がいるのかを把握すべく、職員・患者全員に対し、PCR検査を実施する必要があります。
〇 それを実行したのが、国内初の病院クラスターとされる済生会有田病院(和歌山県)です。
今年2月11日付産経新聞記事「国内初の院内感染1年 和歌山・有田病院 知事「やりすぎが奏功」によれば、
「(前略)医師や患者のほか出入り業者、警備員にまで範囲を広げ、総勢474人にPCR検査を実施。さらに有田病院以外でも感染が疑われる肺炎患者も検査対象に加えた。
仁坂知事は「当時は新型コロナの対応で分からない部分があった。やり過ぎをあえてやったのがよかった」と振り返る。「保健医療行政を担うわれわれが、地域の実情に応じて対応するのが大事。
国に基準を決めてもらうのではなく知事が判断して必要な対策を取ることが必要だ」と強調する。」
#院内感染 国内初「やりすぎが奏功」=和歌山県 - コロナ時代の株式投資
〇 最初の院内感染の有田病院の全員PCR検査が院内感染対策のモデルケースとなれば良かったのですが、残念ながらそうはなりませんでした。
現状では、感染者が出た時点で保健所に連絡が行き、保健所は、国の方針に従い、感染源を特定し、今後の感染対策に活用すべく「積極的疫学調査」を行います。
疫学調査では、最初の感染者に対する聞き取り調査が行われ、濃厚接触者を追跡します。PCR検査は濃厚接触者に限定して実施されます。
#疫学調査 そもそも施設内感染拡大防止は目的ではありません - コロナ時代の株式投資
最初に確認された感染者が感染源であれば、濃厚接触者の追跡による方法も有効かと思いますが、そうとは限りません。無自覚無症状の感染者が感染源であることも多いと思われます。したがって、疫学調査実施中にも感染者が次々にあらわれ、感染は全病棟へと拡大しているケースが多くみられます。
#院内感染 無症状の感染者を介し感染拡大、想定外の長期化、旭川厚生病院。 - コロナ時代の株式投資
〇 院内感染対策成功例である有田病院のように、最初の感染者確認時に院内全員対象のPCR検査を実施すべきだと思います。
その後、疫学調査を行い、今後に活かすやり方に替えたらどうでしょうか。