〇 12月24日付毎日新聞記事「飲み薬承認、コロナ対策の決定打になるか 各国評価には温度差も」によれば、
「(前略)
(厚労省が12月24日に承認した)モルヌピラビルは発症5日以内に使い始める必要があるが、感染が急拡大した今夏の「第5波」では、すぐに病院を受診できないケースが相次いだ。陽性となった患者がすぐ医療機関を受診し、早期に処方を受けられる体制を整えることが必須となる。
ワクチンに加えて治療薬の開発も進み、新型コロナ対策というパズルの中で、残る「1ピース」とされてきた軽症者向けの飲み薬もそろった。
ただ、米国が「他の治療手段がない患者に使う」との条件付きで緊急使用を認めるなど、新型コロナ対策の決定打になるかどうかは見通せない。
抗体カクテル療法
国内の医療現場はこれまで、軽症段階の治療では7月に承認した抗体医薬(点滴薬)のロナプリーブ(「抗体カクテル療法」:筆者注)に頼ってきた。
だが、24日の厚労省専門部会でオミクロン株に対する効果が従来株の1000分の1に減ったとの実験結果が報告され、厚労省は同日、自治体に医療機関への周知を促す事務連絡を出した。
#抗体カクテル療法 オミクロン株に効果期待できず、投与推奨せず=厚労省。「ソトロビマブ」は効果が維持 - 願!コロナ退散
ソトロビマブ
9月に承認した点滴薬ゼビュディ(「ソトロビマブ」:筆者注)については、英グラクソ・スミスクラインがオミクロン株への効果を確認したとするが、医療現場からは「供給量が少ない」との声も聞かれる。(中略)
モルヌピラビル
モルヌピラビルを巡っては、英国が11月、世界に先駆けて承認したが、各国の評価には温度差がある。
米食品医薬品局(FDA)は23日、モルヌピラビルの緊急使用を許可したが、治験での効果が限定的などの理由で、使用許可を「他の治療法がない場合」に限定している。18歳未満については「骨の成育に影響する可能性がある」として認めなかった。
一方、ロイター通信によると、フランスのベラン保健相は22日、5万人分調達予定だったモルヌピラビルの発注を取りやめたと発表した。「直近の研究結果が思わしくなかった」と述べたとされる。
欧米で対応が分かれていることについて、国内の専門家は「(日本政府は)承認ありきではないか。市販後調査(実用化後の追跡調査)に全力を尽くすべきだ」と指摘する。
パクスロビド
日本政府はモルヌピラビルのほか、米ファイザーが開発したパクスロビドを200万人分確保することで同社と基本合意している。
パクスロビドは、薬剤の血中濃度を高め、作用を強めるために抗エイズウイルス薬のリトナビルを一緒に服用する「配合剤」だ。ただ、リトナビルは他の薬との飲み合わせが難しく、狭心症や不整脈、高血圧などの薬や睡眠薬、抗がん剤など併用できない薬が多い。
厚労省幹部は「新型コロナの重症化リスクが高い高齢者や肥満の人は、もともと何らかの薬を使っている可能性が高い。(パクスロビドを)実際に使える人がどの程度いるかは見えていない」とする。治験段階で、重症化リスクが高い人の入院・死亡リスクを約9割減らしたとするが、服用などの制約が多いのが課題となる。
国内勢では塩野義製薬が飲み薬の最終段階の治験を進めるが、感染状況が落ち着いていることもあり、治験の参加者集めに難航している。近く海外でも治験を始めるが、実用化時期は見えていない。
長崎大の迎教授は「『これがあるから大丈夫』という状況には至っていない。日本でどのウイルス株が流行し、どの薬剤が効くのか、今後も局面はガラガラと変わる可能性がある」として、臨機応変な対応が必要とした。」
〇 オミクロン株に対する治療薬の評価のまとめ
抗体カクテル療法は、効果が低く、使えない。
ソトロビマブは、効果有とされるものの、供給量が少ない。
モルヌピラビルは、効果が低く、仏は発注取り消し。米は、使用許可を「他の治療法がない場合」に限定
パクスロビドは、効果有とされるものの、他の薬との飲み合わせが難しい。そもそも日本の承認はこれから。
残念ながら、コロナ治療薬の決定打といえるものはなく、「日本でどのウイルス株が流行し、どの薬剤が効くのか、今後も局面はガラガラと変わる可能性があり、臨機応変な対応が必要」と思われます。
また、モルヌピラビルは発症5日以内に服用する必要がありますが、そのためには、受診した医療機関で、処方を受けられる体制が必須です。
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