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コロナ情報あれこれ

#大阪コロナ 死亡者が多い理由

〇 5月24日付NHK記事「新型コロナ死者 全国最多 大阪で何が? 備えたはずが…」によれば、

新型コロナウイルスの感染の第6波。大阪での死者数は全国最多の1934人となっている。(2021年12月17日~2022年5月18日までの発表分を集計)

 これまでの経験からさまざまな対策をとってきたはずの大阪。なぜこれほど多くの人が亡くなったのか。

 

1000床の受け入れ施設整備も、実際は…

 5月末、大阪市内の展示場に整備された、新型コロナ患者の受け入れ施設がひっそりと閉鎖されることになった。

 

「想定を超える感染爆発が起き、病院や宿泊療養施設に入れなくなるような時の施設として使う」。大阪府の吉村知事がこう話し、自信をみせていた施設。

 

 2021年秋、災害級の感染拡大に備える必要があるとして、府がおよそ78億円の予算で1000床規模を整備した。

 

 入院や宿泊療養の対象外となる主に40歳未満の軽症患者の受け入れを想定し、医師や看護師が常駐して、安心して療養できる環境を整えた。

 

 ところが、第6波で、この施設が使われることはほとんどなかった。運用開始からのおよそ3か月間に利用した人はわずかに303人。

 

 

 過去の経験からさまざまな手を新たに打ってきた一方で、第6波で亡くなった人の数は全国で最も多くなった大阪。いったい、何が起きていたのか?

 

 背景には、府の想定と大きく異なる事態となり、事前にとった対策と求められる対応との間にずれが生じたことがあった。

 

想定をはるかに上回る感染拡大

 2021年11月、府は、第6波における1日の最大の感染者数を「3833人」とする想定を公表。

 

 新たな変異ウイルスが流行しても、ワクチンの接種が進むことで急激な感染拡大はある程度、抑えられると見込んでいた。

 

 ところが、第6波の1日の新規感染者数は最も多い日で、大阪府の事前の想定の約4倍、1万5000人を超えた。

 

 想定よりもオミクロン株の感染力がはるかに強かったことに加えて、多くの人がワクチンを2回接種してから日がたち、効果が薄れつつあったことなどが要因と考えられている。

 

 中でも深刻だったのは高齢者施設でのクラスター=集団感染が急増したことだ。その数は、第5波のおよそ14倍となる716か所にのぼった。(2021年12月17日~2022年5月15日)

 

深刻な状況に陥った高齢者施設 保健所にもつながらず…

 感染の第6波でクラスターが起きた有料老人ホームの1つが、匿名を条件に取材に応じた。

 

 大阪・守口市にある5階建ての建物。各フロアに広さ14平方メートルから17平方メートルほどの個室が並び、介護スタッフが各部屋を回って、食事や入浴の介助などの介護サービスを提供している。

 

 マスクの着用を徹底し、食堂にアクリル板を設置するなどの感染対策をとってきたこともあり、第5波までは施設内でのクラスターは起きていなかった。

 

 クラスターの始まりは、1月28日。80代の入居者の男性が発熱したのがきっかけだった。

 

 施設内での対応は出だしからつまずいた。

 

 当時は高齢者施設で感染者が出た場合、保健所に連絡して入院させるのが原則となっていた。

 

施設長の男性が保健所に連絡をとろうと何度も電話したが、コール音が鳴るばかりで全くつながらなかったという。

 

 感染を広げないためには、入居者どうしの接触の機会を減らす必要があると施設長の男性も理解していたが、認知症の人も多く、繰り返し注意しても、他の入居者の部屋を訪れてしまう人が後を絶たなかった。

 

 この時点で施設に入居していたのは63歳から99歳までの41人。施設長の男性が見せてくれた入居者のリストの「基礎疾患」の欄はさまざまな病気の名前で埋まっていた。

 

 肺がん、脳腫瘍、糖尿病、狭心症認知症、それに脳梗塞。ほぼ全員になんらかの持病があった。

 

施設長の男性

「感染しても無症状であればなんとか対応できますが、感染が広がってもし重症になる人が出ても私たちは見守ることしかできません。保健所に電話がつながらないのでどこに相談していいかもわからず、どうすることもできませんでした」

 

医師もすぐには来られず 孤立深まる

 結局、保健所に電話がつながったのは、男性の陽性が判明してから、1日半がたった1月31日のことだった。

 

 しかし、医師はすぐには来られないという。

 

 有料老人ホームには「介護付き」や「住宅型」などいくつかのタイプがあり、食事や入浴の介助など、介護サービスを行う介護士がいる一方、医師が常駐しているところは極めて少ないのが実情だ。

 

 この老人ホームにも医師はおらず、入居者が体調を崩したときなどには「協力医療機関」と呼ばれる提携先の診療所の医師に往診に来てもらっていた。

 

 今回も、施設長の男性はこの診療所に助けを求めたが、当時、診療所には新型コロナの治療薬がなく、専門的な治療は難しかったという。

 

 この日(1月31日)、新たに発熱などの症状のあった入居者4人が陽性と判明。外部からの支援がないまま、施設内で感染は広がっていった。

 

「早期に治療できていれば…」

 大阪府の要請を受け、守口市の老人ホームに往診の医師が訪れたのは、1人目の発熱から5日後のことだった。

 

 往診に訪れた関西医科大学総合医療センターの中森靖医師が携えていたのは「ソトロビマブ」という点滴の薬だ。

 

 重症化を抑える効果が期待できる治療薬の投与がようやく行われた。

 

「調子はどう?元気出してよ」

 

 当時、施設の職員が撮影した動画には中森医師が入居者ひとりひとりの部屋をまわり、点滴を投与しながら声をかけて励ます様子がうつされている。

 

 施設での感染は最終的に入居者の8割にのぼる33人にまで拡大。中には感染によって体力が衰え、もともとの病気が悪化する人も出てきていた。

 

 症状が特に深刻だった2人について中森医師は入院が必要だと診断したが、搬送できたのは1人だけだった。

 

 当時は感染者の急増とともに医療提供体制も深刻な影響を受け、府内の軽症・中等症の病床運用率は80%を超え、入院調整が困難になっていた。

 

 一方、府が展示場に整備した療養施設で高齢者を受け入れることはできなかった。介護を必要とする高齢者を受け入れるだけの人手や設備がなかったためだ。

 

 中森医師はその後も施設に通い、入院できず、施設に残された80代の男性らの治療を続けた。

 

関西医科大学総合医療センター 中森靖医師

「男性は早期に治療が受けられなかったことで入院が必要になるほど状態が悪くなってしまっていました。こうした施設での対応は、ソトロビマブなどの薬を1日でも早く投与して重症化を防ぐことができるかが重要です。

 この男性のように治療が遅れ、重症化してしまえば施設で対応するのは不可能で、通常なら助かる命が助からなくなりかねません」

 

 残された80代の男性は、症状が改善しないまま施設内で亡くなった。

 

 第6波で施設内で亡くなった感染者は90人と過去最多。(2021年12月17日~2022年5月18日)

 死者数も全国最多の1934人にのぼり、その9割を70代以上の高齢者が占めた。

 

施設長の男性

「亡くなった80代の男性は入居者の間でも人気者で、たくさんの人が彼の部屋を訪れていました。もっと早く治療を受けられたらと思うと残念な気持ちでいっぱいです」

 

「波ごとに異なる状況 対策にミスマッチも」

 高齢者施設を狙い撃ちする形となった第6波。

 事態を重く見た大阪府は、高齢者施設などの医療体制を調査した。

 

 その結果、およそ3600施設のうち、コロナの治療に対応できる医療機関を確保できていると答えたのは、第6波のさなかの3月の時点で、およそ3割にとどまった。

 

 これは全国平均の半分にも満たない水準だった。

 

 この状況を受けて大阪府は、高齢者施設への医療支援の仕組みの再構築に動き出した。

 

 施設のかかりつけ医にあたる「協力医療機関」が対応できない場合、府や保健所から依頼して往診の医師を派遣する仕組みを整備。往診に協力する医療機関は5月13日時点で119まで増加した。

 

 大阪府は、取り組みをさらに進め、高齢者への治療が遅れる事態を避けたいとしている。

 

 

大阪府健康医療部 藤井睦子部長

「第6波で高齢者を中心に多くの方が亡くなったことは大変重く受け止めています。もっと早く、もう一歩踏み込めば良かったかもしれないという思いはあります。これまで6つの波を経験してきて、その都度、想定を上回る事態を経験してきました。そのなかで、対策にミスマッチが生じる部分もありました。状況は波ごとに大きく異なるので、できるだけ感染者にとって身近なところで早期治療をするという大きな方針を持ちながら、起こった課題にできるだけ素早く軌道修正をして、毎日、一歩でも、対策を進めることを積み重ねるしかないのではないかと思っています」

 

今後も起こりうる「想定外」にどう備える

 変異を繰り返し、世界を翻弄し続ける新型コロナウイルス

 自治体は、感染の波が起きるたびに、課題を洗い出し、次に備えて対策を進めてきた。

 

 そして、感染の第6波で、大阪では「事前の想定」からこぼれた高齢者施設に十分な医療が届けられない事態が起きた。

 

「想定外」が今後も起こりかねない中、求められているのはどんな波が来ても必要な人に必要なときに適切な医療が届けられる対応力だ。

 

 いま、感染状況はある程度落ち着きをみせ、どんな状況ならマスクを外してもいいのかといった出口戦略の議論も始まっている。

 

 しかし、そんないまだからこそ、これまで、新しい感染の波が起きるたびにつぎはぎのように積み重ねてきた対策を抜本的に見直し、想定外の感染が広がったときでも、対応できる制度や体制を整える必要があるのではないか。

 

 新型コロナの死者数が全国最多の大阪から突きつけられた問いだ。」

 

〇 コロナ軽症者用治療薬として効果を発揮したソトロビマブですが、現在、新規感染者の大半を占めるオミクロンBA.2に対しては効果が低下しており、厚労省から使用を推奨しない旨の通知が出ています。

#コロナ治療薬 「ソトロビマブ」。BA.2に対する有効性低下、他の治療薬を推奨、厚労省 - 願!コロナ退散